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徳島地方裁判所 昭和28年(ワ)522号 判決

原告 北村知恵子

被告 森口キヨシ

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は被告が本籍徳島県阿波郡柿島村大字柿原字原四十四番地亡北村源八と内縁関係を有しなかつたこと、並に右源八戦死による弔慰金請求権を有しないことを確認する。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として訴外亡北村源八は昭和十七年応召出征し、同二十年六月三十日に戦死した。同人は昭和十四年訴外徳本タマエと結婚して同十六年原告を挙げ前示応召まで右親子、夫婦は同居しタマエ、原告は源八の収入によつて生計を維持していたがタマエは源八出征後同年末に発病し同二十年二月一日死亡した。然して昭和二十七年四月三十日公布された戦傷者戦没者遺族等援護法(以下単に援護法という)により死亡者の死亡当時の配偶者、子、父、母等に弔慰金及び一定の支給条件に従い遺族年金が支給されることとなり同法第三十六条によりその順位は配偶者(内縁関係にあるものを含む)が優先し子供は後順位と定められ、両者併存するときは配偶者にのみ支給されることとなつた。原告は前述するように源八の唯一人の実子であり、源八によつて生計を維持していたもので現在十八歳未満の未婚者であるから弔慰金等を受ける資格を有するものである。しかるに被告は源八とは何等内縁関係も存しなかつたのにも拘らず源八の内縁の妻なりと自称し右弔慰金請求の手続を為しているので原告は被告が源八と内縁関係もなく、従つて弔慰金等受給資格も有しないことの確認を求めるため本訴に及んだと述べ、

被告訴訟代理人は原告の訴を却下するとの判決を求め、その理由として被告と亡北村源八との内縁関係不存在確認請求は単なる過去の事実の存否の確認を求めるものであるから、確認の利益を欠く不適法な訴であり、源八戦死による弔慰金請求権不存在確認の請求は公法上の権利関係の存否確認を求めるものであるが、援護法第六条によれば弔慰金をうける権利の裁定は援護をうけようとするものの請求に基いて厚生大臣が為すものとされて居り、右厚生大臣の裁定に不服があれば同法第四十条以下の規定に従つて不服申立をする途がひらかれている。従つて弔慰金受給権は厚生大臣に請求することによつて発生するもので、且つ弔慰金支払義務者は国であることを考え合せれば原告が弔慰金に関する自己の権利を主張するためには、先づ厚生大臣に請求し、その裁定に不服あるときは抗告訴訟を提起するか或いは直接国を被告として当事者訴訟を起すか、何れかの方法をとるべきである。原告の訴は方法をあやまつた不適法な訴訟であるから却下さるべきである。と述べ、

本案につき原告の請求を棄却するとの判決を求め答弁として訴外亡北村源八が原告主張のような日時、事情で死亡したこと、源八と訴外徳本タマエとの間に昭和十六年原告が出生したこと、源八出征当時原告が同人と同居し同人に生計を依存していたこと、タマエが昭和二十年二月一日死亡したこと、原告が現在十八歳未満で未婚者であること、被告が源八の内縁の妻として弔慰金請求の手続中であることは認めるがその他の原告主張事実を否認する。被告は昭和十三年に北村源八と結婚式を挙げ爾後北村家で起居するようになつたが入籍手続未了でいたままに源八の両親と折合が悪くなり同居後一年半位して北村の家を出て別に一戸をかまえ、源八とは依然内縁関係をつづけていた。一方徳本タマエは昭和十四年末頃源八と事実上の婚姻をなし、北村方に同居するようになつたが入縁せず内縁関係をつづけているうちに原告が出生し源八は之を認知した。しかしタマエはその後間もなく源八と離別し訴外吉田某と内縁関係に入り昭和二十年麻植郡川島町の吉田方にて死亡した。被告はタマエが源八と別れてから昭和十六年八月同人と再婚し(但し入籍はしない)北村家に同居し同年九月二十八日源八との間に菊枝を生み(但し源八は認知しなかつた)昭和十七年源八出征当時は事実上夫婦関係にあつたし源八の死亡が確認される迄は勿論その後もずつと源八存命中の家に起居して源八の両親(母は昭和十八年に死亡)と共に生活し、原告並びに菊枝を養育して来た。而して源八戦死確認後の供養は被告が行なつて来たが、昭和二十三年四月二十七日源八の父訴外北村栄太郎が親族等を集めて同人所有の財産につき死因贈与契約を為した際、源八の二子については親族等賛同の下に原告を本家、菊枝を新家に分けた事情もあつたので栄太郎死亡後は原告名を以て祖先の祭祀を行つているのである。従つて被告は前記援護法第二十四条に謂う配偶者に該当し、同法第三十六条の規定に従い源八死亡に因る弔慰金をうくべき第一順位者であるから原告の請求は理由がないと述べた。

三、理  由

本訴の要旨は原告が昭和二十年六月応召中に戦死した訴外北村源八の遺児で援護法第三十六条により弔慰金を受くべき者であるのに被告は亡源八の死当時内縁の妻であつたと称し、同法条に基きその請求手続をしているとの事実を原因として被告が亡源八と内縁関係がなかつたこと及び右請求権を有しないことの確認を求めるというにある。ところが同法第六条によれば弔慰金、遺族年金等をうける権利の裁定は援護をうけようとするものの請求に基き厚生大臣が行うものであるから、弔慰の受給権者は先づ厚生大臣に対し同法施行規則第三十六条所定の書類を提出してその請求をしなければならないことが明らかである。原告は被告が原告より先順位者として請求しているからとて被告が亡源八と内縁関係なく且つ右請求権なきことの確認を求めるものであるが、前段は後者の請求を理由あらしめるためとは言え、過去の事実の確認を求めるものであつて、確認訴訟の目的となり得ないものというべく、又後段の権利存否の問題は裁判所の判決を得ても当事者間に効あるに止まり、前示裁定庁をも拘束するものではないから、当然に右弔慰金の受給権利者が何人なるかを決定するものではない。従つてこの部分は即時確定の利益がないものと解すべきである(むしろ此の事項は前段説明の如き厚生大臣の裁定事項の内容をなすものと認められる)もつとも前記施行規則第三十六条第二項第七号には請求者の順位より先順位がない旨の申立書及び、その旨を認めることができる戸籍の抄本の添附を要する旨規定してあるけれども、本件の如く順位に争いある場合にも各自が右所定の書類を提出し厚生大臣の裁定をまてばよいのであつて、之がため本件訴訟におけるが如き判決書の添附を要するものとは解されない。

以上説明のとおり本訴は確認の利益ないものと認め訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 今谷健一 小川豪 永石泰子)

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